リブコムズ編集室

ライブカメラ×観光情報サイト「LIVECOMBS」の制作裏側や普段のことを二人で書いています。https://livecombs.com/

【あとがき】天使は名寄に舞い降りる

名寄市 ”神秘の柱がきらめく街”|名寄市のライブカメラ観光の制作秘話です。

 

自画自賛になるが、今回の記事はコラム同士のつながりもオチの質もなかなか良かったと手応えを感じている。これにユーモアと文章量を加えたものが、私の理想とする構成だ。文章が短めなのは名寄市に魅力が無いからではなく、執筆に充てた時間が時間が短かった上に、私の文章力が足りなかったからだ。これからも執筆を重ねて、文章力も更新ペースも向上させていくので、どうか温かい目で見守っていただきたい。

 

私は天秤座の生まれだ。十二星座の中で非生物なのは天秤座と水瓶座だけだが、両者はどちらも神の所有物なのである。天秤の所有者は文中にも出てきた女神アストライア―だ。天秤は弁護士バッジにも描かれているように、正義や公平の象徴である。私は正義感など大して持っていないのだが、古代エジプトに書かれた『死者の書』には、女神マアトは死者の心臓と羽根を天秤にかけるという。穢れが無く羽根より軽い心臓の持ち主は天国へ行き、罪悪にまみれた重い魂はアメミットという獣に食われるのだ。天秤座でなくても正義感は持ち合わせたほうがよさそうだ。

天秤座に生まれたからか知らないが、私は小学校二年生の時の文化祭で、感覚だけで砂を1kg量り取るという競技で優勝したことがある。しかも丁度1kgを計測してだ。そんな小学校二年生の頃は星に関する本を多く読んでいた記憶がある。興味を持ったきっかけは、なんとファーブル昆虫記だ。
当時、私には小学校二年生にして図書室にあったファーブル昆虫記を全巻読破した友人がいた。ページの隅から隅まで文字が並んでいる、難解そうな本のどこに彼は惹きつけられたのか、気になったので私も読んでみることにした。借りたのは第四巻『サソリの決闘』だ。全八巻のうち、なぜ四巻目を選んだのかは記憶にない。友人からお薦めを聞いたわけではないので、きっと副題が一番短かったからだろう。

その本の中で私が心を奪われたのは、サソリの生態や行動ではなく、蠍座にまつわる神話だった。
海神ポセイドンの息子オリオンは、高慢にも私に敵う動物ははいないと自慢していた。それに怒った大地の女神ヘーラは、一匹の毒サソリをオリオンの元に送り込む。サソリに刺されたオリオンは毒により命を落としてしまい、死後にサソリとともに空に上げられ星座となった。星座となってもオリオンはサソリを忌み嫌い、東の空に蠍座が出る頃、オリオン座は逃げるように西の空に沈むというものだ。

これが縁で星座に興味を持った私は、他のファーブル昆虫記を読むこともなく、星に関する本を読むようになったのだ。しかし、この頃覚えた星の地図も、しばらく夜空を眺めないうちに、すっかり読めなくなってしまった。近いうちに図書館に行って、星に関する本を読み直すことにしよう。そういえば、天秤座はラテン語で”Libra(リブラ)”だ。Libraはlibraryという語があるように「図書」という意味もある。私が本を好きなのも天秤座だからかもしれない。

 

作中に登場した「神々と人間が共に暮らす平和な時代」というのは、農耕神であり土星の守護神でもあるサトゥルヌスが統治していた時代だ。その頃は気候は年間を通して温暖であり、耕作をせずとも食糧はすべて自然から手に入った。したがって、人間は文明も法律も労働も争うことも必要なく平和に暮らしていた。いわゆる「黄金時代」だ。その後、サトゥルヌスが追放され、ユピテルが統治する時代になると、世界に四季が生まれ、人々は農耕をせざるを得なくなる。これが「白銀時代」だ。この時代から次第に人間は武器を手にするようになり、欲望を膨らませていくのである。

ところで、サトゥルヌスと聞いてピンと来たかもしれないが、このサトゥルヌスは有名な絵画『我が子を食らうサトゥルヌス』に描かれている神だ。
『我が子を食らうサトゥルヌス』は二人の画家がそれぞれ描いたものが存在する。どちらも、サトゥルヌスが将来、自分の子に殺されるという予言を恐れ、5人の子を次々と呑み込んでいったという神話を描いたものだが、特に有名なのはこちらだろうか。

スペインの画家、フランシスコ・デ・ゴヤの作だ。黄金時代を築いた神とは思えない残虐な姿をしている。

もう一点はオランダの画家、ルーベンスによるものだ。私は『我が子を食らうサトゥルヌス』と聞けばルーベンスの方が先に思い浮かぶ。ルーベンスは数ある画家の中でも馴染みが薄い存在かもしれないが、世界名作劇場の『フランダースの犬』で主人公のネロが見たがっていた教会の絵の作者と言えばわかるだろうか。最期の時になって、やっと見ることができたルーベンスの絵を見た後に、天使たちが舞い降りてネロとパトラッシュを天国へ導くシーンは非常に有名だ。

死後に我々を待ち受けるものは天使か天秤か、それは死んでみないとわからない。しかし、運が良ければ生前に天使に出会えるかもしれない。ダイヤモンドダストは、またの名を「天使のささやき」ともいう。天使の声に耳を傾けに、冬の名寄を訪れてみよう。